「短い人生。夢が無いと面白くない」スーパーボランティア尾畠さん(82)の人生哲学 今も挑戦続ける理由

2022年09月08日 13:00更新

挑戦を続けるスーパーボランティア

 

2018年に山口県で行方不明となった当時2歳の男の子を無事に救助し、全国から称賛された尾畠春夫さん。このことをきっかけに、ライフワークである災害ボランティアの活動も広く知られるようになりました。

その尾畠さん実は80歳を超えた現在も毎年、ある過酷な挑戦を続けています。災害ボランティアに、過酷な挑戦…なぜ、尾畠さんは歩みを止めないのか。挑戦に同行し、その人生観に迫りました。

 

これまでの尾畠さんの記事はこちらから

“スーパーボランティア”の精神受け継ぐ女の子 きっかけは4年前の豪雨被災 尾畠さんとの交流

82歳のスーパーボランティア 原点は由布岳の登山道 尾畠さんが登山者にプレゼント

"スーパーボランティア" 尾畠春夫さん 由布岳の初日の出に誓い

言葉のプロも魅了する〝スーパーボランティア〟尾畠さんの生き方

 

82歳の誕生日を前に・・・尾畠さんが行ったある”挑戦”

 

2021年10月9日。福岡県のJR行橋駅にはスーパーボランティアでおなじみのあの人の姿がありました。

 

ーー尾畠春夫さん

「82になります。10月12日で」

 

ーー男性2人組

「82ですか!?元気良すぎですね」

 

ーー尾畠春夫さん

「令和14年生まれだから。ハハハ・・・」(※本当は昭和14年生まれ)

 

得意のジョークを披露していたのは尾畠春夫さんです。82歳の誕生日を3日後に控える中、福岡県行橋市を訪れていました。真っ赤な服にねじり鉢巻きというお馴染みのスタイルでJR行橋駅からどこかに向かって歩き始めました。

 

 

ーーディレクター

「けっこう距離がありますよね」

 

ーー尾畠さん

「そうですね、約100キロありますから」

 

尾畠さんが挑戦していたのは行橋から別府までの約100キロのウォーキングです。実は毎年この時期に、挑戦しているそうですが、いったいなぜなのでしょうか?

 

ーー尾畠さん

「趣味がボランティアだけど、ボランティアをしようと思ったら、健康が第一ですからね。こういうのは自分の力試しでやって、100キロ歩けなくなったら、ボランティアも段々厳しくなるかなと思う。歩ける間は『継続は力』で歩きたいなと思って」

 

行方不明の男の子無事救助して脚光 今なお人気の理由

 

行橋駅を出発しておよそ15分。一人の女性が尾畠さんに写真撮影を求めて駆け寄ってきました。

 

ーー尾畠さん

「姉さん、これからもまだ暑い日が続くからお肌に気を付けてよ。お肌を大事にしてよ。じゃあ、ごめんください」

 

ライフワークである災害ボランティアの活動も広く知られる尾畠さん。今回の挑戦中も人気は相変わらずでした。

 

 

ーー男性2人組

「(男の子救助のニュースは)こっちも鳥肌が立った」

「凄い感動やった」

 

ーー男性

「今の時代にあれだけ他人に尽くす姿というのが、皆さんに感動を与えるんじゃないかと思いますけど」

 

言葉のプロも魅了する尾畠さん

 

尾畠さんのファンにはこんな人も…日本を代表するコピーライター・糸井重里さんです。2021年4月、尾畠さんを取材するために来県した際、尾畠さんの魅力についてこう話してくれました。(このときの記事はこちら

 

 

ーーコピーライター・糸井重里さん(株式会社ほぼ日・社長)

「考えがものすごくある人だなと思って、いつかあの人の話を聞きたいなと思っていました。言葉を拾ってきて自分で磨いて自分のものにしている。そこがすごく面白い」

 

今回のウォーキングでも尾畠さんは出会った人たちに味のある言葉で話しかけていました。

 

ーー尾畠さん

「写真はすみませんけど、1枚以上100枚以下でお願いします」

「人を大きく、己を小さく。自分は小さくていいんです。人を大きくしてあげる」

 

挑戦の同志

 

スタートから約6時間、残り75キロ付近の豊前市内。尾畠さんに話しかける女性がいました。合流したのは明里まりさんです。

 

 

ここから尾畠さんと一緒にゴールの別府を目指します。尾畠さんとは2020年に参加した災害ボランティアで出会い、感銘を受け、それから尾畠さんの活動を手伝ってノウハウを学んでいます。

 

ーーボランティア仲間の明里まりさん

「尾畠さんがいるだけで、現場が明るくなったり、元気がもらえるのは素晴らしいことだと思います。毎回学びです」

 

ーー尾畠さん

「私がやっているやつは対価・物品・飲食は一切求めないで、何もかも100%手出しで(ボランティアを)やっているから、そういうのに賛同してくれるというのはうれしいですね」

 

挑戦する理由 「チャレンジ精神は常に持つべき。夢の無い人生って面白くないと思う」

 

尾畠さんたちは沿道の人たちと交流しながら、別府を目指しました。夜も歩き続けます。 

そして、日が上り、朝になりました。スタートから21時間が経過していましたが、現在地は宇佐市。まだゴールまで50キロ近く残っていました。

 

ーーディレクター

「大丈夫ですか?体調は」

 

ーー尾畠さん

「めちゃめちゃいい」

 

でも、この時の仮眠の時間はわずか1時間半。それでも沿道の人から呼び止められれば、しっかりと言葉を交わします。そのため、おのずと歩みはゆっくりに…

 

ーー尾畠さん

「来てくれるのはうれしいですよ。あいつが通っているから、皆隠れようなんて言われるよりもね」

 

スタートから33時間。ゴールまであと20キロほどの日出町に入った時にはすでに日没を迎えていました。さすがの尾畠さんにも疲れの様子が…。それでも前に進みたい理由がありました。

 

 

ーー尾畠さん

「チャレンジ精神というか、それはね、私は短い人生の中でそれは常に持つべきではないかと思う。夢の無い人生って、わしは面白くないんじゃないかと思う」

 

貧しい家に生まれたという尾畠さん。学校にはまともに通えませんでしたが、夢だった鮮魚店を開業し、一生懸命働いてきました。

社会への恩返しにとボランティアを始め、今ではスーパーボランティアと尊敬されるようになりました。ただ、体の衰えは避けられません。

 

「1年1年無理はきかない・・・」それでも手を差し伸べたい

 

スタートから37時間。ゴールまで10キロを切るところまでやってきました。しかし、尾畠さんの疲れはもうピークに達していました。

 

ーーディレクター

「無理しなくていいですよ」

 

ーー尾畠さん

「今日の場合はちょっと、今から2時間かけて(別府駅まで)行くのは無理やわ。我々もぶっ通しで歩くというのは…今はかなり腰にきているから、体を壊してしまう」

 

体のことを考え、やむなくここで挑戦を終えることにしました。

 

ーー尾畠さん

「1年1年やっぱり無理はきかないわ。やる気はあったんだけどね…」

 

本当は歩いてゴールしたかった別府駅にタクシーで移動。ここでも観光客から声を掛られ、疲労困憊の中でも相手を笑顔にしていました。

 

ーー尾畠さん

「自分の体力とかいろいろな面で前と同じことは多分無理と思うから。だけど、自分ができる限りのことは困っている方に災害に遭った方に手を差し伸べさせてもらいたいなと、心では思っています」

 

「これからも手を差し伸べさせてもらいたい」。体力の衰えを感じながらも、尾畠さんは困っている人を思い、これからもチャレンジを続けます。

 

テレビ大分では尾畠さんの活動に長期間、密着した「続 復興へんろ道 82歳 スーパーボランティアと呼ばれて…」を9月10日(土)午前2時から放送します。(同番組はドキュメント九州としてFNS九州・沖縄各局で放送)

 

 

 

 

そのほかの記事はこちらから↓↓↓

 

 

“スーパーボランティア”の精神受け継ぐ女の子 きっかけは4年前の豪雨被災 尾畠さんとの交流

 

言葉のプロも魅了する〝スーパーボランティア〟尾畠さんの生き方

 

 

82歳のスーパーボランティア 原点は由布岳の登山道 尾畠さんが登山者にプレゼント

 

 

"スーパーボランティア" 尾畠春夫さん 由布岳の初日の出に誓い

 

 

 

白井 信幸記者

最新のニュース