大分市中心部に“サッカー専用スタジアム”構想 経済効果期待も実現には大きなハードル 大分

2025年01月25日 08:00更新

貸し会議室大手TKPの河野貴輝社長は、大分県大分市中心部にサッカー専用スタジアムを開設する構想を明らかにしました。

 

大分トリニータの社外取締役でもある河野社長は、将来的にトリニータのホームスタジアムとしたい考えです。その候補地のひとつには大分市営陸上競技場、ジェイリーススタジアムが浮上しています。

 

 

全国的に相次いでいるサッカー専用スタジアムを中心とした街づくり。今回の構想に対して関係者の反応などを取材しました。

 

 

 

 

大分市中心部にサッカー専用スタジアム?

 

ーー河野貴輝社長

 

「大分駅の近くにサッカー専用スタジアムをつくることで大分市のにぎわいと活性化に貢献していきたい」

 

 

TOSの取材に対し、こう話したのは大分市出身で貸し会議室大手TKPの社長、河野貴輝さんです。TKPはサッカーJ2大分トリニータの運営会社の筆頭株主であり、河野社長は社外取締役を務めています。

 

今回のリモートでのインタビューの際にはトリニータのマスコットキャラクター「ニータン」がしっかり映っているか気にするなど、河野社長のトリニータ愛はサポーターの間でも有名です。

 

そんな河野社長が打ち上げたのがトリニータのホームスタジアムとして大分市中心部にサッカー専用スタジアムを開設する構想です。

 

 

陸上競技場と兼用のスタジアムをホームとするチームが多い中、近年、全国でサッカー専用スタジアムを建設する動きが相次いでいます。

 

去年、長崎市の中心部にオープンした長崎スタジアムシティ。V・ファーレン長崎のホームとなるサッカー専用スタジアムを中心に商業施設やホテルなどが集まった大型の施設で全国的にも話題となりました。また、広島市にも中心部にサッカー専用スタジアムが開設されました。

 

 

サッカー専用スタジアムの利点は何といってもピッチとの距離。観客の目の前でサッカーの迫力や臨場感を楽しむことができます。

 

 

ーー河野貴輝社長

 

「サッカー専用スタジアムはサポーターと選手との距離がすごく近くて臨場感がある形でサッカーを観戦できる。駅や繁華街に近いところにサッカー専用スタジアムがあれば街も盛り上がるのではないかということで、構想を含め考えている」

 

 

 

臨場感が魅力 サッカー専用スタジアムの効果は?

 

サッカー専用スタジアムを街の中心部に開設すると、どんな効果が見込めるのでしょうか。

 

去年2月に開業したサンフレッチェ広島のホームエディオンピースウイング広島を例に見てみます。

 

 

以前、J1・サンフレッチェ広島がホームとしていたホットスタッフフィールドは陸上競技と兼用のスタジアムです。市の中心部から1時間ほどの距離にあり遠いうえ、試合時にはs周辺道路で渋滞が発生するなど、サポーターからの評判はよくありませんでした。去年誕生したスタジアムは市内中心部にあり、平和記念公園などの観光地や紙屋町といった繁華街が徒歩圏内と、アクセスが大幅に改善。

 

開業元年となる昨シーズン、サンフレッチェ広島のリーグ戦の1試合当たりの平均観客動員数は2万5609人。前年の1万6128人から大幅に増え、過去最多を記録しています。

 

また、中国財務局のおととしの試算では、このスタジアムの経済効果は初年度だけでおよそ830億円としています。

 

大分市中心部で実現できるのか 候補は

 

一方で気になるのが、大分市での実現の可能性です。

 

 

今回、河野社長が候補の一つとしてあげているのが大分駅からおよそ3キロの場所にある市営陸上競技場、ジェイリーススタジアムです。およそ30億円を上限にトラックや芝生に座席を設けたり屋根を設置するなどしてJ1の基準を満たすような改修を行いたいとしています。

 

 

この構想について、大分トリニータを応援するサポーターからは様々な声が聞かれました。

 

 

ーートリニータサポーター

 

「(サッカー専用スタジアムは)陸上競技場兼用と違って選手との近さ、コートとの近さがあってますます盛り上がると思う。長崎のようにはいかないかもしれないけれど近づけてもらって全国的に話題になるようなスタジアムにしてほしい」

 

 

「長崎は実際に行って本当すごいなと思ったが、大分はジェイリーススタジアムの跡地に検討していると聞いたので立地がどうなのかなと。あと交通面が気になる」

 

 

 

 

 

大分FC社長は気になる点も‥

 

現在は、クラサスドームにホームを構えるトリニータ。2002年の日韓ワールドカップの際に建設されました。サッカーのほか、陸上競技、ラグビーの試合の会場にもなり、収容人数は40000人と国際基準の大きなドームです。

 

トリニータを運営する大分フットボールクラブの小澤社長は「臨場感があるサッカー専用スタジアムというのはひとつ魅力あるコンテンツだと思う」と話す一方で、気になる点もあると言います。

 

 

ーー小澤正風社長

 

「ジェイリーススタジアムを主として使ってきた人、皆さんに迷惑をかけてはいけない。(仮に)移ったところで皆さんに応援していただけないチームになっては意味がない。2万8000人(昨季の最多入場者数)の人が来てくれたのもキャパがあるクラサスドームだからこそ。今はクラサスドームでしっかりと戦っていきたいと思っている」

 

 

この構想の動きを見守りたいと話しました。

 

 

 

大分市は今後の活用方法を検討へ

 

候補の一つであるジェイリーススタジアムは現在、陸上競技の大会や練習会場として幅広く活用されています。大分市陸上競技協会はTOSの取材に対し「突然の話で驚いている。まだ何も聞いていないので詳しくは答えられないが、もし陸上で使用できなくなれば非常に困ると思う」と話しています。

 

 

一方で、ジェイリーススタジアムの所有者である大分市の足立市長は今後の活用方法を検討するプロジェクトチームを年内に立ち上げる方針だと話しています。

 

 

ーー足立信也市長

 

「どういう改修をしてどういう形で残していくのか検討のための仕組みはことし中に作らなければいけないと思っている」

 

 

 

 

サッカー専用スタジアム開設を実現するにあたっては、候補地の選定はもちろんのこと、ジェイリーススタジアムを改修する場合でも、現在使用している関係者の理解や駐車場の確保、周辺の渋滞対策などクリアすべき課題は多くあります。

 

2019年、ラグビーワールドカップの際、トリニータの試合が現在のジェイリーススタジアムで2試合開催されましたが、小澤社長によりますと「喜んでくれるサポーターの声もあった一方で、トイレなどで迷惑をかけた部分がある」とも話しています。

 

 

様々な課題が見えてた今回の構想、今後の動きが注目されます。

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