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TOSの番組に出演しているシェフがオレオレ詐欺被害に
年末年始も注意が必要なオレオレ詐欺。大分県内の2023年の被害は10件で3370万円ほどでしたが、2024年は60件で5億円以上と急増しています。
そのほとんどが警察官をかたるオレオレ詐欺となっています。
11月、大分県内に住むこちらの女性が詐欺の被害にあいました。TOSのゆ~わくワイドにも出演し、料理の楽しさを伝えてくれている菅恵美子さんです。
詐欺の手口を知ってもらい被害にあう人を無くしたいと自身が被害にあった経緯を話してくれました。
警察官をかたる詐欺については日ごろからニュースなどで耳にしていたそうですが、実際の手口はとても巧妙だったと話しています。取材しました。
きっかけは「+」で始まる国際電話 その後「大阪府警 捜査第2課の渡辺良」だと名乗る人物
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「全部うそだと分かった。私が知っている詐欺事件と私が体験したことは、別のものとしてしか捉えられていなかった」
今回、TOSの取材に応じてくれたのはゆ~わくワイドにも出演してくれているイタリアンシェフの菅恵美子さん。中津市山国町で宿泊施設などを営んでいます。
菅さんは11月、警察官や検察官をかたるオレオレ詐欺の被害にあい、あわせておよそ600万円をだまし取られました。菅さんが明らかにしてくれたのは詐欺グループの巧妙な手口でした。
菅さんが事件に巻き込まれたきっかけ。
それはスマートフォンに突然かかってきた「+」から始まる国際電話でした。
電話を受けると音声ガイダンスが流れその後、NTTドコモの職員を名乗る男と電話が繋がります。
そして名前と住所を聞かれた上で次のように言われたといいます。
◆NTTドコモの職員を名乗る男
「菅さんの電話番号を使って迷惑メールの被害が出ています。犯罪に巻き込まれている可能性があるので、大阪府警に電話して欲しいです」
電話はそのまま大阪府警の警察官を名乗る男に転送されました。
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「(NTTドコモの話は)まったく自分に身に覚えも無く疑われる要素も無いと思っていたので、そこは割と軽くスルーしていた」
電話に出た男は自分は「大阪府警 捜査第2課の渡辺良」だと名乗ります。
そして、詐欺事件が近年、多発していることを菅さんに伝えた後、電話が詐欺では無いことを信用させるためにある手口を使います。
それが……。
「詐欺じゃないかと思うたびに、大阪府警の電話番号と同じだったよな…」と
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「(大阪府警の)ホームページを見て、そこに電話番号がありますよねと言われ、下の方にスクロールすると下の方にありますと、それを覚えておいてくださいねと言われて、僕が今から電話を切ってかけ直しますと言われた」
するとすぐにホームページに記載されていた電話番号から折り返しが。
これが菅さんが今回の詐欺を信じてしまった大きなきっかけでした。
この2つの番号、一見同じですが、よく見ると頭に「+」が。国際電話であることを示しています。
番号を信じた菅さんはその後、「大阪府警の渡辺良」と名乗る男からこう言われたといいます。
◆『大阪府警の渡辺良』と名乗る男
「菅さんの携帯電話が、ある大きな詐欺事件の犯行現場から押収され、通帳やキャッシュカードも発見されました。菅さんは事件の容疑者です。資料なども送りたいのでSNSで話をさせて欲しいです」
そしてLINEを交換し送られてきた2枚の紙。
「守秘義務誓約書」そして「守秘義務誓約内容」と書かれています。
この事件に関して他言しないことや、インターネットでの検索を制限することなどが書かれていました。
菅さんはインターネットを制限されることを不審に感じ詐欺を疑ったそうです。しかし…。
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「これ詐欺じゃないのかなと思うわけですよ。でもこれ詐欺じゃないのかと思うたびに、インターネットに出てきた(大阪府警)の番号は同じだったよなって」
指示に従わなかったら「検察官を名乗る女」から電話 真実味が増し恐怖心を抱く
その後、「大阪府警の渡辺良」から再び電話があり、「事件の容疑者として逮捕されないために保釈保証金という制度がある。それを支払えば逮捕されず無実を証明出来る。 一緒に事件の解決に向けて協力して欲しい」と正義感を揺さぶるように話を持ち掛けてきたそうです。
◆オレオレ詐欺の被害者菅恵美子さん
「金の話をされた時点で詐欺でしょって本人にも言いました(電話先の)刑事に」
金を要求された菅さんは数日間、指示に従いませんでした。
すると検察官を名乗る女から電話がかかってきました。
◆検察官を名乗る女
「最初に電話をしてからもう3日経っています。あなたは何も行動を起こしていないですよね。今から身柄を拘束するよう手続きをします。逮捕されたくなければ、きょうの午後5時までにお金を用意してください」
この電話で真実味が増し、恐怖心を抱いた菅さんは、LINEなどで相手の指示されるままに行動します。
そしてこの日、指定された口座に現金を振り込むように要求され振り込みの限度額を変更するように言われます。
【以下、LINEのやりとり】
◆被害者 菅恵美子さん
「郵便局にいます」
◆『大阪府警の渡辺良』と名乗る男
「(限度額変更が)終わったら教えてください」「終了しましたか?」
◆被害者 菅恵美子さん
「はい」
◆『大阪府警の渡辺良』と名乗る男
「車で待機しておいてください」
電話でATMに誘導 「スマートフォンをバッグの中で通話状態にしておくように」と指示
その後、電話先の相手が検察官を名乗る女に代わりATMに誘導されます。
この時、スマートフォンはバッグの中で通話状態にしておくように指示されたそうです。
そして菅さんは友人などから借りて集めた200万円ほどを口座に振り込みます。
その後、振り込んだ証明として利用明細票を相手に送ると、入金が確認出来たと電話で告げられます。
そして、その日の夜、「大阪府警の渡辺良」から一通のラインが…。
◆『大阪府警の渡辺良』と名乗る男
「きょうはお疲れだと思いますのでゆっくり休んでください」
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「(大阪府警の渡辺良が)お金も必ず返ってくるし、本件が終わったら書類を全部持って大分まで説明に行かなければいけないと、その時に(金を貸してくれた) 友人にもちゃんと説明はするし、あなたたちの仲に亀裂が入るようなことはありませんのでと言われた」
「信頼関係が築けているって思い込んでしまっていた」「細かい情報を出して啓発を」
菅さんは翌日以降も指示に従い、あわせて600万円を指定された口座に。これで身の潔白が証明出来ると思ったそうですが、その後、「大阪府警の渡辺良」を名乗る男と連絡が取れなくなり実際に大阪府警に電話をしたことで詐欺に気付いたということです。
振り込んだおよそ600万円は戻って来ていません。
菅さんは詐欺の手口があまりにも巧妙で、気付きにくいことをもっと啓発していく必要があると話しています。
◆オレオレ詐欺の被害者 菅恵美子さん
「(大阪府警の渡辺良と)信頼関係が築けているって思い込んでしまっていた。すごく巧妙なんだよということをもっと知らせないと(単純な)オレオレ詐欺だったら絶対に分かる。でももっと巧妙なところになったら騙される人が増えてしまう。なるべく細かいところまで情報を出すべきだと思う」
【解説】家族や愛犬の話で「好青年」を感じさせるような語り口で近づく男
今回のオレオレ詐欺、登場人物は3人です。
「NTTドコモの男」、「大阪府警の渡辺良」そして「検察官の女」です。
まず「NTTドコモの男」が「+」から始まる国際電話を使って「犯罪に巻き込まれている可能性」を伝えます。
そして「大阪府警の渡辺良」が菅さんを事件の容疑者として疑い、SNSでのやりとりを要求。事件解決のため保釈保証金の支払いを求めてきます。
最後に「検察官の女」が電話で金の支払いを催促し振り込むまでの流れを指示するという流れです。
菅さんは途中まで詐欺かもしれないと疑っていたわけですよね?なのになぜ被害にあってしまったのでしょうか。
「大阪府警の渡辺良」について菅さんは好青年のように感じていたということです。
始めは口調を荒げて恐怖心をあおって来たそうですが、通用しないと分かると家族や友人、愛犬などの話を持ち出して親近感が沸くように近づいてきたそうです。
さらにこちらをご覧ください。通帳と、キャッシュカードです。実は菅さんの名前が書いてあります。もちろん偽物ですが、事件の関係先から見つかったと言って話を信じさせようとしてきたそうです。
では、私たちはどうやって詐欺に気づくべきなのでしょう。警察によりますと、ポイントは大きく3つ。「SNSでのやりとりを要求」「電話でお金を要求する」「誰にも相談させない環境を作る」です。
本物の警察官はこのような話を持ちかけることは絶対に無いということです。
県警は「年末年始で家族が集まるこの時期に改めて詐欺への注意を呼び掛けてほしい」と話しています。