戦時中に大分市の収容所で亡くなったドイツ兵の墓を大使館が訪問「墓が守られていることに感謝」
大分市や別府市を歩いてみると、電柱などに「別府市火売8組」といった「組」を使った住所の表記が目に入ります。
この「組」という住所の表記、少し複雑な事情を抱えていて、自治体は住所を整備しなおす住居表示を進めています。別府市を取材しました。
■同じ建物なのに住所が2つ?
別府市の朝日大平山地区公民館。
ここの住所は別府市大字鶴見940番地の2。しかし一般的に使われている住所は別府市火売(ほのめ)8組1だといいます。
別府市と大分市の一部地域では住民票などに記載されている「大字の住所」と日常的に使用されている「組」を用いた表記の「通称住所」、2つの住所を持つ場所があると言います。
■通称の住所しか知らない市民も
実際に別府市役所で使用されている住民異動届を見ると、住所を書く欄が1つあり一方には「通称住所」の文字が。
ーー別府市 政策企画課 清末妙課長
「別府市にいると通称住所しか知らない方も多くいたり、郵便番号が通称住所に紐づいているというのもあって通称住所の方が圧倒的に使われている人が多い」
市によると組を用いた「通称住所」が使用されることになった詳しい経緯は不明だが、地番を利用した「大字住所」では範囲が広く場所を特定するのが大変なため、「通称住所」を使う人が多いといいます。
別府市では現在およそ半数の世帯が大字の住所と通称住所、2つの住所がある「二重住所」の状態です。
■住所を一本化へ その理由は
現在、大分市と別府市では住所を一本化し二重住所の状態を解消する「住居表示」という取り組みを進めていて、馴染みのある通称住所の地名を使いながら建物1軒1軒に「何丁目何番何号」といった新しい住所を付けています。
住居表示を行う理由のひとつがデジタル化。
別府市によると、来年度から全国統一の行政サービスシステムが導入される予定で、このシステムやマイナンバーカードでは大字や何丁目の表記の住所を記載する必要があるとのこと。普段、通称住所を使っていると、混乱したり本人確認ができないおそれもあるそうです。
また、通称住所は「この辺りが何組」とおおまかに定めたもの。特定の建物をピンポイントにさすものではないため、近所と全く同じ住所になります。別府市内では、多いところでは100世帯ほどが同じ通称住所となっているところもあるといいます。
全国的にも珍しいという「組」を使った通称住所の表記。
市によると、「進学などで県外に行くと銀行などの手続きで通称住所を書いて窓口で「組」の表記について尋ねられた」という問い合わせもあるんだとか。
■登録した住所の変更手続きが必要に
住居表示が進めば、対象の地区に住む人は、住所が変わる。
対象の地区に住んでいる人は、免許証や銀行、各種保険など、登録している様々なサービスの住所をすべて変更する必要が出てくる。
ーー別府市 政策企画課 清末妙課長
「住所の変更、銀行の通帳とかを含めて手続きをすべてしていただいかないといけないのでそこはちょっと非常に煩雑だという声をもらう」
別府市では市民の負担軽減のため、不動産の登記や保険証など一部の住所変更手続きを市が行っている。
■市内の郵便局は 通所住所「名前で判断」
市内の郵便局からは「住居表示」に歓迎の声が。
通常、郵便物の仕分け作業では機械で配達順まで並べるが、およそ半数の世帯が通称住所を使用する別府市では、機械では順路通りに並べられない。そのため、同じ住所の場合は職員が名前で判断するなどして手作業で並べているという。
また、通称住所があることでほかの通称住所がない地域よりも配達員が配達エリアを熟知するまでに時間がかかるという。
ーー別府郵便局 第二集配営業部 立川雅己課長代理
「住居表示をすると、住所が街区および住所番号で表示されわかりやすくなることから新人の社員が配達しやすくなるのかなと考えている。新しい住居表示の住所で統一されることで誤配達の減少にもつながるとと思う」
住居表示には、対象地区の説明会などを行い、議会の議決を2回とるなど多くの手順を踏むため、住所の変更完了までは1つの地区で1年半から2年ほどかかるといいます。大分市では合意が取れた地区から順に進めているほか、別府市では2027年度までに市内ほとんどの世帯の「住居表示」を完了させたいとしています。
全国的にも珍しいという「組」表記の住所、見られなくなる日も近いかもしれません。