純度100%の水素に挑戦「地産地消の水素社会を」企業ロゴは高校生のアイデアを採用【大分】 

2024年09月10日 07:00更新

高純度の水素 幅広い分野で需要

 

大分工業高等専門学校(以下、大分高専)発のスタートアップが今、大手自動車部品メーカーなどと連携し、混合ガスから超高純度の水素を低コストで精製する装置の開発を進めている。

 

 

高純度水素は次世代半導体の製造や水素自動車の燃料など幅広い分野で需要があり、“メイドイン大分”の技術が海外からも注目されている。

 

 

 

 

理論上は純度100%の水素に精製可能

 

開発の主体は大分市のスタートアップ「ウルトラ・ハイ・ピュリティ(以下、UHP)」。

 

 

研究の第一人者である大分高専の松本佳久教授(副校長)と、大分高専のOBで市内のプラント関連資材会社を経営する横山元浩社長が2024年4月に立ち上げた会社である。

 

 

松本教授は、水素を含んだ混合ガスを、比較的安価なレアメタル「バナジウム」をベースとした合金製の膜を透過させることで水素だけを取り出すユニークな精製法の研究を約20年間続けている。

 

 

「理論上は純度100%の水素に精製できる」(松本教授)という。

 

 

 

台湾政府の研究機関からも共同開発の打診

 

バナジウムに特定の元素を加えて合金にすることで、膜の耐久性が飛躍的に向上。精製装置の試作機はすでに完成しており、2024年中には実証初号機(プロトタイプ)の完成を目指している。

 

 

また、2025年2月に東京ビッグサイトで開かれる国際水素・燃料電池展への出展も計画中。

 

 

UHPの技術は海外からも注目されている。世界的な半導体メーカー・TSMCの設立に関わった台湾政府の研究機関からも共同開発の打診があり、協議を進めている。

 

 

 

60作品から選ばれたデザイン

 

企業のブランドを打ち出すうえで重要となるロゴマークのデザインは、鶴崎工業高校(大分市)の産業デザイン科に依頼。

 

 

「大分発の技術を売りにする会社なので、デザインも地元の高校に依頼したかった」と横山社長。6月に学校側にオファーし、60作品の中から加島瑠菜さん(3年)の制作したデザインを採用した。

 

 

ロゴマークは今後、名刺や会社のホームページなどに活用する予定。

 

 

 

「開発した技術で地産地消による水素社会の実現を目指したい」

 

社名の頭文字である「U」をモチーフに、元素の中で最も軽い水素が上へ上へと昇っていくイメージをデザイン化したという加島さん。「会社の業績が上昇し、水素が世の中に広がっていけばとの思いを込めた。採用されたと聞いた時は『私のでいいのかな』と驚いたが、今後、社会に出ていく上で自信につながった」と喜ぶ。

 

 

8月には松本教授と横山社長らが鶴崎工業高校を訪問し、加島さんのほか、優れた作品を制作した渡邊芽依さん(3年)、岩男友結さん(3年)に表彰状を送り、謝意を伝えた。

 

 

“メイドイン大分”の技術で高純度水素精製の実用化を目指すUHP。

 

 

松本教授は「大分は臨海部にある石油化学コンビナートから水素を含む大量の混合ガスが排出されているほか、バイオマス・廃棄物資源など様々な水素源を有しており、地の利を活かせる特別な地域。開発した技術で地産地消による水素社会の実現を目指したい」と話している。

 

 

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