にぎわい戻り人手不足深刻な観光地…温泉地・由布院の旅館では“スキマバイト”活用の動きも
夏の風物詩、鵜飼
水郷日田の夏の風物詩、鵜飼。
鵜飼とは「鵜」という鳥を使って、アユなどの川魚を獲る伝統的な漁法。日田の鵜飼は岐阜県の長良川、愛媛県の肱川と共に日本三大鵜飼の１つに数えられています。
４００年以上の歴史を誇る日田の鵜飼ですが、遊覧船の利用客の減少などを受け、鵜匠は今やわずか２軒と存続の岐路に立たされています。現状を取材しました。
鵜匠を引き継ぐ三代目
日田の夏の風物詩、鵜飼は、例年5月20日から10月末まで行われ、かがり火に浮かび上がるその幻想的な光景は、訪れる人の目を楽しませます。
その鵜飼が行われる三隈川のほとりに、鵜匠、西尾和弘さんの鵜小屋があります。
――西尾さん
「今から鵜飼に出るので準備を」
鵜匠とは鵜を操って漁をする人のこと。ほとんどが世襲で、西尾さんは3代目です。
鵜飼とは
鵜の大きさは80センチから90センチほど。西尾さんの鵜小屋では6羽を飼育しています。鵜は茨城の専門業者が野生のウミウを捕獲して、全国に供給。若い鵜は、ここにきてまだ1年。古参の鵜は11年にもなるそうです。
基本的には憶病なので、環境と人間にならすことが重要なんだとか。
――西尾さん
「だいたい３か月もすれば、もう人間の手を噛まなくなる。最初は噛みます。痛いですよ。よく言われるんですけど、鵜匠はまず（鵜の）顔を覚えなさいという教えです。毎日、見ておけば分かります。顔を見て分からないと鵜匠はできない」
ここで素朴な疑問。鵜は魚を食べて飲み込んでしまわないのでしょうか。
――西尾さん
「鵜の首の周りに仕掛けがあるんです。漁をしている時は（仕掛けが）締まる」
鵜が魚を捕っている間は縄で喉を細くし、魚を飲み込めないようにしています。そして、鵜匠が手で鵜の首を下から押し上げることで魚を吐き出すようになっています。
伝統を継承する難しさ
鵜匠の仕事道具としては、その他に鵜たちを操る手縄。水ぬれを防ぐ、「腰みの」などがあります。腰みのの裏を見てみると、とても細かく編み込まれているんです。まさに職人芸。ですが、ここに一つ問題が…
――西尾さん
「これ（腰みの）を作る人がいないんです。探しているけどなかなかいない。とにかく後継者が一番。（船頭も）もう年がいって、うちの竿差し（船頭）はもう、７０歳」
そう、長い歴史の中にあって、鵜飼いに欠かせない道具の作り手が途絶えようとしているんです。道具作りだけでなく、鵜匠である西尾さんにも後継者はおらず、伝統を継承していけるか厳しい状況を迎えています。
日田の鵜飼の歴史 鵜匠は２軒のみに
日田の鵜飼の歴史は戦国時代末期までさかのぼります。
日田を統治した豊臣秀吉の家臣が、三隈川で鵜飼をさせたことが始まりとされています。
その後、遊船から鵜飼を見る川遊びが定着すると、鵜匠は鵜飼の観覧料や鮎をとって周辺住民に売ったりすることで生計を立てていました。
しかし、観光客の減少や河川環境の変化により次第に収入は減少。コロナ禍で観光客が減った事も追い打ちをかけています。生業とするには厳しい状況となり、日田市内の鵜匠は、西尾さんを含め2軒だけになってしまいました。
闇に浮かぶ幻想的な光景
午後7時、西尾さんは鵜たちを車の荷台に乗せて、三隈川へ向かいます。
あたりが闇に包まれると、ようやく、かがり火をたいて船を出します。
鵜匠と棹差しの二人一組、阿吽の呼吸で漁を行います。どんなに鵜たちが自由に動いても、決して手縄が絡まったりしないように捌くのが鵜匠の腕の見せ所！そうしていると…
――西尾さん
「獲れたよ！」
見事！鵜が魚を捕ってきました。
遊覧船ですれ違う観光客の皆さんも、夏の幻想的な風景を楽しんでいるようです
「人のやれない仕事に就けた」西尾さんの思い
手縄をさばきながら、鵜と呼吸をあわせて漁をする西尾さん。
365日、鵜と生活を共にするということも伝統を継承していく上で1つのハードルになっていると話します。
――西尾さん
「若い人は特に仕事をもっていれば夜は自由に遊びたい。（鵜飼は）仕事が終わった後に、夜またエサやりなどにしばられる。それでも毎日見ないと…」
この日の取材を終えると、正直な心のうちを明かしてくれました。
――西尾さん
「正直に言えばもう、（鵜飼は）淘汰されると思う。各地で鵜飼を辞めているところも出てきている。人のやれない仕事。やりたいと思ってもやれない仕事に就けたんじゃないかと思う。」
観光客を魅了する幻想的な光景―
三隈川伝統の鵜飼は、いつまでも残していきたい水郷日田の夏の風物詩です。
三隈川の鵜飼は１０月末まで行われています。
