「心の支え」3年ぶりの日田祇園 唯一の人形師が亡き母に送る人形 

2022年07月27日 17:00更新

大分県の日田市で開催される日田祇園が23日(土)・24日(日)の週末、規模を縮小しながらも3年ぶりに開催された。

本番前、仕上げの段階を迎えていた日田でただ一人の人形師・長嶋さんに話を聞いた。

 

2年間開催できず‥唯一の人形師

 

300年の伝統を誇る日田祇園。日田の夏の風物詩だ。

疫病や風水害を払い、安らかな日常を祈願するお祭りだが、その「疫病」のせいで2年間開催することができなかった。

ヤマを飾る人形を作る人形師の長嶋静雄さんは「ヤマを引く人たちも作っていく方も、寂しい限り。もう3年間待ってから気が抜けたみたいですね、みんな」と話す。

 

 

山鉾の人形を作る、日田で唯一の人形師・長嶋静雄さん。 

祖父、父のあとをうけての3代目。24歳の時から人形作りにたずさわり、もう40年を超えた。

 

◆人形師 長嶋静雄さん

「『ヤマがきた!ヤマがきた!』ちゅうて、山の方をですねパッと見たときに、もう笑顔に変わる表情がですね、やっぱ、喜びっちゅうかですね。それが一番のね、喜びですね」 

 

作る人形は歌舞伎や謡曲からヒントを得て長嶋さんが一人で考える。

新型コロナウィルスや水害に「打ち勝つ」願いを込めて、力強い場面を探す。

  

母への感謝を込め

 

長嶋さんには、今年特別な思いのある人形がある。それが「義経千本桜」。

 

 

 

◆人形師 長嶋静雄さん

「母が一番最初に昭和29年に義経千本桜の“道行”を作ったっち、ずっと言ったもんですからね。だから今回はもう感謝を込めてこちらの『義経千本桜 道行』ですけど、それを作りました」

 

2年前の3月、92歳で亡くなった母・タネヨさん。タネヨさんも人形を作っていて、長嶋さんにとって師匠でもあったタネヨさんが最初に作ったのが「義経千本桜」の「道行」だった。

 

 

◆人形師 長嶋静雄さん

「祇園好きな母ですね、裁縫の上手な。よく習いました、裁縫のことは。本人が亡くなって、できるかな?と心配しよったと思うんですよ。ひとりいなくなったからですね、人形作りが。だからもう、そんなことはねぇ、できたバイ!って思ってから報告ですね。」

 

日田祇園は心の支え

3年ぶりの祇園。

今までよりも規模は小さめだが、日田祇園は長嶋さんにとって、そして日田の人たちにとって心の支えだ。

 

◆人形師 長嶋静雄さん

「もう暑い盛りに、なんで、あんたなんがおもしりいかい、ちゅうかもれませんけど、1番のこれでパワーをもらって、また明日からの仕事に臨む。みんなそういった感じと思いますけどね」

 

最新のニュース