普通って何? トランスジェンダー公表し自分らしく生きる ミュージカル俳優 日野樹さんに迫る

2021年11月21日 09:00更新

唯一無二の妖艶さと圧倒的な存在感 

 

 

2020年12月。『大友宗麟』を描いた舞台が大分市で行われた。そこで宗麟の敵役として異彩を放っていた『青壁童子』。

 

演じていたのは日野 樹(ひの いつき)さん、21歳。役者名は『青空めじろ』だ。

 

 

――主演・大友宗麟役 観月 ゆうじさん

「小さいときから並外れたオーラがあったので、華やかな部分もありながら、今回は華やかかつ妖艶で女性か男性か性別は無いですけれども、まさしくそれ以上の日野くんが誕生していっているなと思っていますね」

 

 

――青壁童子役  日野 樹さん(役者名『青空めじろ』)

「トランスジェンダーですので、私は。トランスジェンダーもいろいろあって、私は多分クロスドレッサー(生まれ持った体の性別とは違う装いをする人)の方になるんですよね。人前に出る時は女性のかっこう。『青壁童子』も『青空めじろ』も男か女かわからない性の壁を越えている」

 

ダンスとの出会い のめり込んでいったミュージカル

 

 

樹さんは3歳の頃、母親の勧めでダンススクールに通い始め、そこで踊る楽しさ、魅せる楽しさを知り、ミュージカルの世界にのめり込んでいった。18歳の時、『青空めじろ』というモノマネ歌手の役で主演。

 

以来この『青空めじろ』を名乗り、介護の仕事をしながら、大分で歌やミュージカルの舞台に立つようになった。ダンススタジオは樹さんの原点とも言える場所だ。幼いころから、ほとんどの時間をここで過ごしてきた。

 

 

――ダンススタジオ シオナーズ 清松 万恵さん

「(樹さんは)とにかく天真爛漫。楽しくて仕方がないみたいな感じですかね。他に同世代の男の子が2人いたので、3人でいつも行動をしていたみたいで、ダンスでもプライベートでも遊んだりして。その中でも彼は特異な存在ではあったかなと。小さい頃から個性的ではあったと思いますね」

 

 

 

――ダンススタジオ シオナーズ 清松 万恵さん

「きょうのメイク良いんじゃない」

 

――日野 樹さん

「やろ?今日はちょっと板垣李光人くん寄りにしてみた。同じ⾹⽔まで買ったんで」

 

――ダンススタジオ シオナーズ 清松 万恵さん

「本当!そんなのあるんや!」

 

樹さんの最近一番の推しは俳優でモデルの板垣 李光人さんだ。

 

 

――日野 樹さん

「本当にキレイ。映画を観に行って、この子どっちかな?というところから始まって、おしゃれ大好き、美容メイク大好き、メイクをするためにカラーの勉強もしっかりしていて。ただ自分が好きでメイクをしている。近未来というか、最先端のジェンダーレスというか。ガッツリおかまの人とかオネエの人は(メディアに)いっぱい出ているけど、やっと芸能界にジェンダーレス男子が出てきた。『性別はありません』『どっちのファッションも楽しみます』みたいな人が出てきたのにも心が動いたというか」

 

普通とは?トランスジェンダーのありのままの自分

そんな樹さんは日頃こんなことを感じていた。

 

 

――日野 樹さん

「トランスジェンダーって取り上げられて、みんな考えましょうみたいな。言い方が悪いけど、ホント暇か?って思うけど。普通とはなんですか?普通とは(笑)」

 

 

ありのままの 今の自分を残したい。そんな思いで時々撮影もしている。カメラマンも実は樹さんに魅了されたファンの一人。

 

 

――樹さんを撮影する 斉藤 由恵さん

「樹さんは小さい子にも年齢関係なくアドバイスを求めたり、私くらいのおばちゃんたちとかでも友達みたいに接するし、年齢も性別もない。何か不思議ですね。こんなどこにも人いない」

 

また、舞台衣装を担当する竹林 れいこさんも樹さんに魅了された『樹ファン』だ。

 

  

――舞台衣装担当 竹林 れいこさん

「衣装担当としては楽しみな逸材ではある。きれいなものが大好きで、女性でもわからないような美に関する感性に優れたところはあって。それは女性でも気がつかないかもしれない」

 

 

――舞台衣装担当 竹林 れいこさん

「ダンスは最初お母さんの勧めやったん?」

 

――日野 樹さん

「そうそう、お母さん。『いっちゃんがグレーゾーンの人やったけん、普通にやっていけるのか微妙やな』って」

 

――舞台衣装担当 竹林 れいこさん

「小さいときからそういう片鱗をお母さんは見ていた?」

 

――日野 樹さん

「片鱗というのは無いけど、知的な(障害が)あるのかなと」

 

――舞台衣装担当 竹林 れいこさん

「女の子の遊びが好きだなこの子とか・・・」

 

――日野 樹さん

「昔からおままごととか人形遊びが大好きだったそうです。私が物心ついた頃からメイクとかもしていたけん、ばあちゃんとかお化粧セットとか買ってくれた。人形も買ってくれよった。刀を渡したら神楽を舞っていた人だから。戦わん。刀は舞うもの」

 

そんな樹さんにも舞台に立つことが不安だった事があったという。

 

――日野 樹さん

「最初、ご年配の方、お姉さま方がいる中で、ドレスを着てメイクして歌うというのも何か言われるかなというちょっとした恐怖はあった。『男の子なのにドレスを着て歌いよるわ』みたいな目で見られるのかなと思っていたら、意外と『キレイやった』とか思っていたのと全然違って、受け入れてもらっていたのかな」

 

今の樹さんにとって舞台に立つこと。それは・・・

 

 

――日野 樹さん

「自分じゃない自分になれる。自信がつく。甲冑を着ているかのような。もう全然怖くないみたいな感じになるので、今はとりあえず舞台に立ちたい。こんな人もいるよみたいな。周りにいなかったとしても、あなたがそこから出た時に絶対同じセクシャルの人と会えるし、こういう人たちだっているんだから悩まないでと思う」

 

【2021年11月20日放送のサタデーパレットより】

続いては、サタデーパレットの出演者たちが迫る樹さんの魅力

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サタデーパレット スタッフ

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