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2020年、大分県宇佐市で親子2人が殺害された強盗殺人事件で、大分地裁で行われていた裁判員裁判は17日に結審します。検察側は「被告の主張は言い逃れのための嘘のストーリーで、人命軽視も甚だしい」などとして死刑を求刑しました。被告は一貫して無罪を主張しています。
強盗殺人などの罪に問われているのは大分市の会社員・佐藤翔一被告(39)です。
佐藤被告は農業の山名高子さん(79)と長男で郵便配達員の博之さん(51)を包丁やはさみなどで何度も突き刺すなどして殺害し、現金約8万8000円を奪ったとされています。
事件発生から約1年8か月後に佐藤被告は逮捕され、2024年5月20日に裁判員裁判が始まりました。大分地裁によりますと公判前整理手続きが2年以上かけて行われたケースは大分県内では初めてだということです。
初公判で佐藤被告は「全て僕はやっていません。僕は犯人ではありません」と起訴内容を全面的に否認し、無罪を主張しました。
検察側は冒頭陳述で「被告は借金をしていて、返済のために犯行を考えた」などと動機を指摘。その上で、事件当日に佐藤被告が運転していた車のトランクから被害者のDNA型と完全に一致する血痕が検出されたことや、自ら警察に嘘の電話をかけアリバイ工作などを行ったと指摘。その電話は「プロレスマスクをつけた男に車を貸した」という内容だったと説明しました。
一方、弁護側は「被告は事件の2日前に覆面の男たちから動画撮影への協力を依頼された。男たちから指示を受けて行動し、真犯人に陥れられた」などと主張しました。
5月24日の裁判では検察側が事件後の防犯カメラの画像を公開。画像には佐藤被告が事件翌日に大分市内の店で雑巾などを購入し、その次の日には別府市内の店で洗剤などを買う様子が映っていました。検察側は事件後に佐藤被告が証拠隠滅を行ったと指摘しています。
6月10日からの3日間は被告人質問が行われました。弁護側の質問の中で、佐藤被告は事件当日「ユーチューバーを名乗るプロレスマスクの男たちと合流し、このうち1人を車に乗せて現場近くに向かった」と説明。その後、男たちから血の付いた服などが入った袋をトランクに積みこまれ「処分してほしい」と頼まれ、コインランドリーで洗って捨てたと話しました。
しかし、これまで佐藤被告は「プロレスマスクの男に車を貸した」と供述していました。被告人質問の中で「車に乗せて現場近くに向かった」と説明したことに対し、検察側は矛盾があると指摘。これに対し、佐藤被告は供述が変わっていることを認めた上で、「現場付近にいたと言ったら、疑われると思った」と弁解し、「男たちは大量殺人犯でその濡れ衣を着せられると思った」などと話しました。
また、遺族から心境を聞かれた際には「本当の犯人を目の前にしていない事が不幸で残酷な事実だと思っている。証拠の一つ一つに目をつむらず、ちゃんと見てほしい」と述べていました。
17日に行われた裁判員裁判で検察側は「被告の主張は言い逃れのための嘘のストーリー。残虐で極めて強固な殺意に基づく犯行。人命の軽視も甚だしい」などとして死刑を求刑しました。
一方で弁護側は被告の車の中から第三者の血痕が見つかっていることから第三者の犯行の可能性について指摘した上で、「犯人であることの決定的な事実はない」と改めて無罪を訴えました。
大分地裁の裁判員裁判で死刑が求刑されるのは初めてです。
裁判の取材を続けている山路記者です。
◆TOS山路謙成記者
最大の争点は「佐藤被告が事件の犯人」かどうかという点です。
犯行には佐藤被告の車が使われたことが分かっています。
この点について佐藤被告は「事件当日プロレスマスクの男たちと合流し1人を車に乗せて現場近くに向かった」と説明しています。その後、「男たちから血の付いた服などが入った袋を処分してほしいと頼まれ、コインランドリーで洗って捨てた」としています。
こうした点について検察側は被告の供述が変化していることを踏まえ、「別に犯人がいるかのようなうそのストーリーを創作し客観的な証拠と矛盾があればその都度上塗りし続けてきた」などとして被告の主張は信用できないと結論づけています。
一方で弁護側は、「被告の車から被害者のDNA型が検出されたことなどが明らかになっているが犯行を裏付ける決定的な証拠はない」として「検察は有罪であることを証明できていない」と強調しています。
検察側から死刑という非常に重い求刑が行われた今回の裁判。裁判員や裁判官がどのような結論を出すのか注目されます。
この裁判についてですが17日は朝から傍聴券の抽選が行われ、大分地方裁判所には160人の希望者がいました。
◆TOS田辺智彦アナウンサー
私も抽選に並んで裁判を傍聴しました。
被害者の遺族が意見陳述をしている時、佐藤被告の目の辺りを見ていたのですが、遺族が声を震わせながら感情をあらわにしている時でも被告の表情は一切変わらず、遺族を見つめていたシーンが記憶に残っています。
◆TOS山路謙成記者
検察側から死刑が求刑された際、遺族はハンカチで目元を抑え涙を拭っていました。
これに対し佐藤被告は反応することなく一点を見つめていました。
7月の判決に注目したいと思います。