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漁業もここ数年苦しい時代を迎えていて、乗り超えていくための新しいチャレンジが各地で行われています。
大分県佐伯市鶴見の取り組みを取材しました。
安定した水産業を目指して
海佐伯市鶴見。
豊かな水産資源に恵まれ、漁業は地域の「重要な」産業です。
しかし、ここ数年、コロナ禍で都市部の飲食店向けの高級魚が売れなくなったり、燃料の高騰などで安定した漁業経営が難しくなってきています。
佐伯市鶴見で3年前から始められた水産業をより強いものにしていくための取り組み。
鶴見の漁師さんたちがこれまでの漁業を続けながら、空いた時間を利用して行う新しい漁業への挑戦です。
そのチャレンジのひとつが「真牡蠣の養殖」。
恵まれた環境を最大限に生かして、高品質のものを人手をかけずに環境にやさしく育て収益を目指します。
ワインや焼酎を海底に沈める「海底熟成酒」
そして、もう一つがワインや焼酎を海底に沈め、熟成させる取り組みです。
かつて沈没した船の中から、何十年も眠っていたお酒が引き上げられ、高値で取引されたことがありました。
味の変化とロマンを求めて、海底でお酒を熟成させる取り組みが日本でも10数年前から行われています。
シラス漁師の芦刈誠仁さん。
資源保護のために1日操業していた漁を今は半日にしています。
また、抱える若い漁師たちの働き方改革もあって時短が求められています。
――シラス漁師 芦刈水産代表 芦刈誠仁さん
「どうしてもやっぱり収入が減ってしまうので、何かできないかと考えたときに、始めたのがカキ養殖と、それとやっぱり若い従業員とか若い漁業者のために、何かこう楽しいことができないかと考えてやり始めたのが、この海底熟成酒の事業になります」
お酒を海底に沈めると、劣化につながる紫外線にあたりません。
そして、一定の温度で、波に揺られます。
すると、どんな変化が起きるのでしょうか?
――別府大学 食物栄養科学部 塩屋幸樹准教授
「海底で熟成させることによって、通常の陸上でやるよりも熟成が進んで香りが立つお酒に変わっていたという結果になりました。蜂蜜のような甘い香りの成分であるコハク酸ジエチル、あるいはアップルとかバラの成分である香気成分が増えているというような結果になっています」
ワインでは香りが立つようになり、また焼酎は苦味や塩味の値が減りスッキリと飲みやすいお酒になるんだそうです。
地元の酒屋や飲食店、酒造会社も期待
この日、海に沈められたのはワインと焼酎約350本。
この取り組みには、地元の酒屋さんや酒造会社も期待を寄せています。
作業を見守る女性2人。
古田章子(のりこ)さんと茂子さんの姉妹です。
この日、2人は250本のワインと焼酎を沈めました。
佐伯市鶴見で酒屋さん、佐伯市中心部で飲食店を営むお二人。
飲食店では厳選したお酒と地元の食材を生かした料理を提供しています。
――古田茂子さん
「おいしくなって戻ってきてねっていう感じです」
――古田章子さん
「漁師さんと振興局の方と酒屋、三つが協力してずっとずっと続く事業というか、毎年、回を重ねていってひいてはそのワインを飲みに、またはカキを食べに鶴見にいろんな人が訪れてくれたらいいなと思ってます」
実はこの日、引き上げ作業も行われました。
臼杵市野津町で酒造会社を営む藤居さんです。
今回は「1年熟成させた」焼酎の引き上げです。
――藤井酒造 藤居徹社長
「やっぱり本格焼酎の価値を高めるっていうのは我々の焼酎メーカーにとってはすごい課題なんですよね。世の中のものが値上げされても、なかなか焼酎って高く買ってもらえないですし、こういうのが会社を守って雇用を守ってということにつながっていきますから全力で取り組みたいです」
漁師さんの未来を守り、海から生まれる新しい価値をビジネスチャンスに変える取り組み。
佐伯市鶴見の挑戦です。