「人類が他の星に到達した時、何が良くて何が悪いのか」手のひらサイズの装置から考える【大分】

2023年04月05日 21:00更新

宇宙事業に関連する新事業

 

大分県には、これまでにないアイデアや技術を使って事業をはじめたスタートアップ企業がある。

 

 

官民共同プログラム「ユケムリネクスト」で採択された2つの起業を紹介する。両社とも「宇宙事業」に関連する構想を持っている。

 

 

 

宇宙のごみ掃除「箒星」

 

1つ目の企業は宇宙のごみ掃除をするという「箒星」。一体、どのような会社なのか。

 

 

役目を終えた人工衛星などは、宇宙ゴミ「スペースデブリ」と呼ばれ、宇宙開発の大きな障害となっている。人口衛星の打ち上げは2030 年までに現在の約10 倍、3000 機以上になるとも言われる。このまま増え続けると、人工衛星同士の衝突などのリスクが拡大し、宇宙開発が持続不可能になってしまう。

 

 

そこで箒星の浪方さんは、国際宇宙ステーションの元運用管制官である長谷川純一さんとともに、「アーク ワン」と呼ばれる、スペースデブリを宇宙空間に残さない装置の開発を行なっている。

 

 

「アーク ワン」は、手のひらほどの大きさで、打ち上げ前の人工衛星に取り付ける。衛星が宇宙空間で役目を終えると、内蔵していた膜が開き、大気圏への再突入を誘導する。人工衛星が燃え尽きるまでの期間が大幅に短縮されることで宇宙ゴミ問題の解決につながるという。

 

 

なぜこの事業を始めるのか、浪方さんに話しを聞いた。

 

 

 

 

事業を通じて「宇宙倫理」を考える

 

――浪方さん

 

「宇宙の色々な部品たくさんありますけれども、ハイスペックよりかはアナログの方が実は安定するので良かったりとか、わざわざ高い部品を調達しなくても、民生品を使 って低コストで今僕らは作ろうとしていて、意外とやってみると宇宙って近いんだなって思ったりしてます。で、2024 年ですね。ここは一つ打ち上げ機会(海外)が得られたので、人工衛星に我々の部品を付けさせていただいて、実際宇宙で検証をするというところが今決まっております」

 

 

――

 

「2024 年というと、もう来年です。もうすぐそこまで迫っているんですね。楽しみですね」

 

 

――浪方さん

 

「僕らは箒星の中で2050 年に「0 デブリ」という大きい目標を掲げて動いています。これが大分から、実現できたらいいなと思っていたり、実は僕らは宇宙ゴミを扱っていますけど、もう少し広く捉えると倫理かなと宇宙倫理のお話かなと思っていたりします。これから人類が宇宙に進出をしたときに、例えば他の星に我々地球人が到達したとき、僕らが住みやすいように星を改変していいのか。テラフォーミングしていいのかとか、何が良くて何があまり良くないのみたいな自分たちの中の正義感とか道徳心みたいな。それをまずゴミという問題から、皆さんと一緒に考えていくような、日本がそこを世界に先駆けて持続可能な宇宙開発を考えるような、そこに携わっていく。そんな会社にしたいなと思っています。」

 

 

 

 

日本最大級の化粧品関連の展示会に参加

 

もう1つの注目企業は「おおいたセレーナ」。代表の西脇さんが日本最大規模の「化粧品」関連の展示会に、初出展するということで同行した。

 

 

――西脇さん

 

「なんとかここの商談で100 社程度が興味を持っていただいて、そこから1割程度の方が購入いただくところまでもっていきたい。」

 

 

 

 

独自の技術でセルロースナノファイバーを抽出

 

おおいたセレーナが取り扱うのは、次世代の素材として注目される「セルロースナノファイバー」。植物や木材に含まれるセルロースを、「ナノメートル」単位で抽出したもので、軽くて強度が高く、環境にも優しい素材として様々な用途への活用が期待されている。

 

 

そんな中、大分大学の研究では「竹」からセルロースナノファイバーを抽出する独自の技術を確立し、特許を取得した。この技術を使って、さまざまな商品開発を行うべく、おおいたセレーナは創業された。

 

 

商品化の第一手として着目しているのが「化粧品」の原料。大分ならではの「あるもの」を混ぜることで、高い保湿性を発揮することが分かったからだ。2023年度には、竹田市に工場をつくる計画で、4年後には、年商5億円を目標としている。

 

 

――化粧品業界の関係者の反応は

 

「新しい素材が出てくると、我々のものづくりのバリエーションが広がるので、非常にありがたい」

 

 

「日本由来の原料とかが結構望まれるお客さんは多いので、そういう観点から面白いなと思う」

 

 

一般の化粧品の原料と比べると価格は高いものの、独自の新しい技術への関心は高いようだ。

 

 

 

 

持ち運べる温泉を目指す

 

――西脇さん

 

「しっとりという成分は、セルロースナノファイバーだけではなくて、水にこだわりをもちました。『温泉水』でセルロースナノファイバーを作ってしまおうと。もともとこのセルロースナノファイバーというのは、いわゆる精製水であるとか、純水で作るものが一般的と言われています。一方で、我々のような立ち上げたばかりの会社は、他の企業が誰もやっていないことをやらなければいけないということで、この温泉という成分に着目しました。「持ち運べる温泉」というようなイメージですね」

 

 

――

 

「持ち運べる温泉。これがセルロースからできるんですね。幅広い可能性を感じます。波方さんいかがですか?」

 

 

――浪方さん

 

「すごく可能性があるなと思っていて、僕らが今開発をしているアークと呼ばれる部品にも実は注目していたりします。化学繊維で作られたものから、竹由来のものに変換をしたりですとか、骨組みの部分でも竹には実は注目をしているので、今後ご相談したいなと思っています」

 

 

――西脇さん。

 

「今、竹田市というところで進めていくという計画を立てています。その理由は、竹田市という名前のとおり、竹が豊富にあるということ。そして温泉水も竹田市の温泉水というのは結構特殊でして炭酸泉なんですけれども、保湿の成分と一応分かっているのが美白の成分。全国に売り出していくということを進めていきます。そして、人工衛星で竹がどこにあるのかということをきちんと把握していくといったようなこと。これを大分県と一緒にできていければと思っています。」

 

 

 

 

――浪方さん

 

「西脇さんの事業っていうのは、僕が大分に来てすぐにいろいろな方からご紹介をされて、いつか一緒に専門的なお話もしてみたいなと思っていたところでした。改めて今日商品とか技術のご説明を聞いて、本当に僕らが今やっているところに生かせるのではないかとまたご相談をしたいなと思っているので、今日きっかけに一緒に宇宙開発を進めていきたいなと思っています」

 

 

「宇宙のごみ掃除」に「竹から製造するセルロースナノファイバー」。大分発のスタートアップ同士のコラボレーションで事業に新しい広がりがうまれるかもしれない。

 

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