実はグライダーの聖地?久住「鳥人間」とは違うその魅力 シーズン到来

2022年08月20日 10:00更新

グライダーシーズン到来

 

2月に野焼きをした久住滑空場(竹田市久住町)ですが、あれから5カ月余り。すっかり緑に覆われ、グライダーの季節が到来しました。 赤い機体が緑に映えますね!

 

そもそも、なぜ久住に滑空場があるのか? その謎の答えが、格納庫の横に建立されている石碑にありました。

 

 

なぜ久住に?

 

石碑にある解説文には、『1934(昭和9)年9月11日、久住山肥前ケ城山頂から翔びたった九帝五型滑空機「阿蘇號」は1時間26分の日本記録を樹立し、山岳滑翔の先駆をなした。

 

九州帝国大学 佐藤博先生の設計、前田健一氏の製作、志鶴忠夫氏の操縦技術が一体となって快挙を成し遂げ、これを契機に我が国のグライダー界は飛躍的に発展した。少年時代、その飛行を目撃した久住町白丹出身の九州工業大学 本郷英士先生が山岳滑翔の聖地とすべく1970(昭和45)年ここに滑空場を誘致開設した。

 

久住滑空場開設30年の節目と21世紀を迎えるにあたりグライダーに情熱を燃やした先人達の努力と功績を顕彰しその夢を継承するためここに記念の碑を建立する。』とあります。

 

今から90年ほど前に、久住山の上からグライダーで飛び立ち、当時の新記録を作ったというだけでも驚きですが、少年時代にその飛行を見て滑空場を誘致した方がいらっしゃった事にも大いに驚かされますね。

 

グライダー合宿

 

現在 久住滑空場は、公益財団法人 日本学生航空連盟の久住訓練所となっており、主に大学航空部の練習拠点になっていますが、学生訓練の合間に社会人クラブであるNPO九州グライダースポーツ連盟も一緒に活動しています。

 

 

先日7月24日(土)今シーズン最初のグライダー合宿が行われるということで、ほぼ2年ぶりに参加してきました。

 

ところで、なぜ「合宿」なのでしょうか? 軽飛行機と違い、エンジンが付いていないグライダーは、ウインチや飛行機で“引っ張って”もらわないと、自分自身では離陸できません。

 

また、多くの場合 飛ばない間は分解され専用トレーラーに収納・保管されています。機体の再組み立て、滑走路までの搬送、曳航索の運用、運航管理など、飛行するための準備がたくさん必要≒人がたくさん必要というわけで、必然的に「合宿」スタイルになります。

 

 

この日は、九州各地から学生さんや体験搭乗の方も含めて19人が参加しました。 午前9時 格納庫前集合で、「早く来た順に搭乗できる」というルール?があります。

 

ただ、その前に機体の組み立てという肉体労働が待っています。

 

準備は入念に

 

私も手伝っていたので写真がないのですが、トレーラーから慎重に胴体を引き出して、その後に主翼(右翼・左翼)、水平尾翼を取り付けます。翼は結構重くて、ある決まった位置に入らないと固定できないので、翼の装着はなかなか大変です。時間的には30分弱といったところでしょうか?

 

組み立て後、チェックリストをもとに点検を行い、問題なければフライトのため着陸帯に運びます。(写真の機体は1人乗りの機体だったため、この日は運航しませんでした。) 近い場合は人力で、遠い場合は車+人力で運びます。 基本的に向かい風で離陸するため、風向きによって離陸(発航)する場所が変わります。

 

 

この日は、南風のため「南向き発航」ということで、格納庫のすぐ前の「北向き発航」ではなく、1kmほど離れた丘の上からということで、軽トラ+人間で、まずは機体を丘の上に移動させます。

 

発航予定場所に着くと、“ピスト”という現場指揮所の設営を。これまた数人がかりで行います。高原には遮るものがないので、テントなど日陰が無いと晴天時には大変なことになります。

 

機体をひっぱるウインチは、先ほどの格納庫のあった側でスタンバイ。 そこから曳航索というロープを、この場所まで(もちろん軽トラで)引っ張ってきます。そして、もろもろ準備が整ったところで、いよいよフライトです。

 

体重調整用のオモリを付けたり・外したりして、重量や重心位置が規定内に入るように調節します。 私はグライダーのライセンスは持っていないので、後席に教官に乗ってもらい、私は前席に乗り込みます。搭乗後、最終点検を行い、いよいよ離陸です。 

 

 

いよいよ空へ

 

離陸はこんな感じです (YouTube) https://youtu.be/1EpB2TqrSg8

 

この日はコンディションがあまり良くなく、上昇気流も弱く、離陸後すぐに「場周経路」と呼ばれる着陸するパターンに入りました。 2年ぶりのグライダー搭乗だったので、ほぼ何もできず、教官の操縦で着陸した、あっという間の3分間。 午後から2回目の搭乗順も回ってきましたが、1回目よりは舵が使えたものの、同様にあっという間の4分間のフライトでした。

 

残念ながら私はこの日のみの参加だったため、片付けをみんなで行った後、午後6時前 滑空場を後にしました。(ほとんどの皆さんは、宿舎に泊まられ翌日もフライトされました) これから、秋までグライダーシーズンが続きますが、今年は、もう何回か参加できるかな?

 

 

普段操縦している、エンジンのついた軽飛行機とは似て非なる乗り物の「グライダー」こちらの免許をもらうまでは、まだまだ相当時間がかかりそうです。 それにしても、よく歩いたり、走ったりしました!

 

野焼きの様子はこちらの記事で

 

 

取材協力:NPO法人 九州グライダースポーツ連盟 https://q-glider.com

阿部 洋樹
取材リポート

TOS編成部 勤務・元アナウンサー

休暇を利用して分割渡航し、2009年5月 カナダで自家用操縦士技能証明(飛行機・陸上単発)取得。10年3月 日本の技能証明に書換完了。 21年4月 特定操縦技能審査員 認定。日本航空機操縦士協会 代議員・九州支部委員(大分空港担当)。

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