高級旅館をコロナ禍に続々 有名温泉地に進出する星野リゾートの狙いは

2022年04月30日 12:00更新

(『界 由布院』完成イメージ 提供:星野リゾート)

 

高級ホテルの運営で知られる星野リゾートは大分県由布市に今年8月に新しい温泉旅館をオープンすることを2022年4月、発表しました。

 

「ご当地の魅力に出会える温泉旅館」をテーマに全国の有名温泉地で展開する「界」のブランドの1つで、地域の文化を盛り込んだ部屋や会席料理の食材にもこだわった施設です。

 

コロナ禍で観光業が厳しいとされる中、なぜあえて「高級旅館」を全国で展開するのか。星野佳路代表がオンライン会見でその狙いなどを明かしました。

 

界 由布院の開業と今後の展望

 

由布市湯布院町にオープンする「界 由布院」は、界シリーズとしては九州では4か所目となります。

 

九重町と別府市に続き大分県内に3か所となりますが、星野代表は「大分に集中させようという発想ではない」と話します。

会見動画はこちらから

 

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「界のビジョンは、日本の有名温泉地に星野リゾートのファンが行った時に拠点を持ち、サービスを提供する場所を確保するという、星野リゾートが長く取り組んできたこと。大分に(施設を)集中させようという発想ではなく、九州の有名温泉地に界のブランドがサービスの提供を始めることが大事だと思っています。」

 

 

『界』は2022年も続々開業している(星野リゾート提供)

 

その言葉通り、今年は長崎にも界シリーズを展開する計画です。

 

星野リゾートには「星のや」や「リゾナーレ」などのブランドがありますが、実は有名温泉地にフォーカスした「界」シリーズがコロナ禍で最も好調だといいます。

 

理由について、星野リゾートが提案した近くの観光地などの魅力を再発見する「マイクロツーリズム」など複数の要因が重なったと分析しています。

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

マイクロツーリズムを展開しやすかったというのが一つと、コロナ禍において比較的安全に滞在できるという安心感を持っていたということ。かつ、界は比較的高級温泉施設なので、海外に行っていた方が国内に行き先をシフトした結果、一つの選択肢になったなどの理由が重なっています」

 

一方で、都市部を中心に展開しているブランドについてはコロナ禍で需要が落ちているため、反転攻勢に出たいとしています。

 

『界 別府』の評価と『界 由布院』への期待

 

由布市に先立ち県内では去年、別府市に「界」シリーズが開業していて、すでに手応えを感じているようです。

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「(『界 別府』は)満足度もしっかり取れていますし、コロナが本格的に終わって九州にいらっしゃる方々が増えてくると、確実に予定通りの業績になる施設だと確信しています。別府に関しては部屋数に対してしっかり適切な価格をつけ、アフターコロナに向けて需要を高めていくということをやりたいと思っています。」

 

 

昨年開業した別府市の『界 別府』 

 

また、『界 由布院』については、「別府との差を際立たせることを特徴づけてきた」と話しました。

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「九州を周遊する方々には、ぜひ両方を体験していただけるような施設を作っていきたいと思っています。」

 

九州での展開について

 

界シリーズについて「拠点数に特別大きな目標を持っているわけではない」としていますが、九州での開業を積極的に検討してきたそうです。

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「10年くらい前から星野リゾートの顧客層、ファンの方々が行きたいと思うところに、積極的に拠点を獲得していくことを努力してきました。

当時、九州は『界 阿蘇』しかなく、部屋数も非常に少なかったです。なので、九州での開業のお話を頂くと、積極的に検討してきたというのは、今回2施設(由布院と雲仙)開業させていただく大きな理由の一つです。」

  

 『界 由布院』起工式時の星野代表

 

インバウンドの回復は

 

観光業界にとって重要なトピックとなるのが「インバウンドの回復」です。

 

まずは、進行している円安が国内観光事業にプラスに働く可能性もあると分析しています。

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「海外の方々が日本に安く来ることができるようになるということと、国内の方々が海外旅行に行く(価格が)高くなるので、行き先を国内にシフトしてくれるという効果もあります。」

 

今年を『アフターコロナ最初の年』にしたいと話す星野代表。インバウンドの回復に見据えているのは3年後の大阪万博です。 

 

ーー星野リゾート 星野佳路代表

「インバウンドの戻りについては、2025年は大阪の万国博覧会という国家イベントがありますので、これを成功させるべく日本全体の観光産業は動くべきで、期待というよりも目標とすべきだというのが私の考え方です。ことしは国際旅行、日本人も海外へ出始める、海外からも日本に来始める、アフターコロナの最初の年だと思っています。」

 

コロナ禍の収束がなかなか見通せない中、星野代表はインバウンドについて2022年は2019年に比べ「15%程に留まるのでは」と分析しています。その上で、2025年に100%に戻せる可能性はあるとして、戦略的に取り組みたいと話していました。

 

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