若者を変え、街を変えた「TOSS COMPANY」西村偵紀 第3部

2021年11月28日 12:01更新

回遊性が街を作る

 

82年の3月に「TOSS」が開店し、訪れた最初の秋。西村氏は勝負に出る。

 

「これが売れなかったらやめる」。東京で品切れが続いていた「チャイナクロス」というブルゾンを大量に仕入れ、見事に売り切った。

 

そしてそれをきっかけに、次々に店舗を広げって行った。

 

創業の翌年にアメリカンカジュアルをメインに扱う「SURPULUS(サープラス)」。84年にはスーツなどビジネスファッションをメインとする「BASIS(ベイシス)」を開店させる。

 

 

 

 

人生をかけて挑んだ40年

 

西村氏がお手本にしてきたのが熊本市の中心部だ。路面店が数多くあり、街の雰囲気を形作っていた。

 

「一店舗では行き詰る。複数の店舗で回遊性を作れば街全体が生まれ変わる」。

 

その信念のもと、この40年間、府内町界隈に5つのビルを所有し、衣・食・住12店舗を手掛けてきた。

 

その内、1991年にオープンさせた「ユナイテッドアローズ」は全国で東京原宿に次いで2店舗目だった。またフランスの老舗ブランド「SAINT JAMES(セントジェームス)」の専門店などもあった。

 

延べで作った借金は12億円。

 

人生をかけて挑んできた40年だ。

 

こうして次々と個性的な路面店を仕掛けるとともに、大分市中心部の街づくり全体にも影響を及ぼしてきた。

 

片側アーケードの「若松通り商店街」が、1994年海外の石畳みを意識した今の「府内五番街」として生まれ変わる。その際、雨除けのアーケードを維持する声がある中、「開放的な通りに変えて一新しましょう」

 

強く主張を繰り返した結果、賛同が得られ今の姿となった。

 

 

 

西村氏の思い

 

77歳になった今の思いを西村氏に聞いた。「最近は大それた夢は見ない」と、さらり。

 

ただ「ファッションという商売をやめるつもりは無い」とも話す。情熱は消えていない。

 

「TOSS COMPANY」は来年3月、創業40周年を迎える。

 

「思いっきり楽しんだ。思いっきりやらせてもらった」

 

「大分と言うキャンバスに自分の絵を描いてきた」

 

そう語る西村氏は、清々しい笑顔を湛えていた。

 

 

 

若者を見つめ、街を見つめ続けてきた西村氏。

今の若者に伝えたい言葉を聞くと「情熱のある所に不可能は無い」。

 

そう返ってきた。

 

世の中が成熟し、閉塞感すら漂うこの時代、街を変えていくような挑戦はとても困難なことのように思える。

 

しかし40年間、情熱を絶やさず道を切り開いてきた西村氏のその言葉は、時代が変わっても、挑戦を夢見る者の心にまっすぐに届くに違いない。

 

 

     おわり

営業部・帯刀 康宏

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