近所の人が窓から「早く逃げて」 多く命が助かった背景に“地域のつながり” 大分市大規模火災

2025年12月02日 18:20更新

住宅街で発生し、180を超える建物が焼けた大分県大分市佐賀関の大規模火災。

 

 

それでも、多くの人の命が助かった背景には「地域のつながり」がありました。

 

 

今回、近隣の人の声掛けによって避難でき現在は、規制が解除されたエリアの自宅で生活を再開させたばかりの男性に当時の話を聞くことができました。

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「草がいっぱい生えていた。草も全部燃えた。ここからこういう風に燃えていった。ここに燃えた跡がある」

 

 

橋本道明さん77歳です。自宅は無事でしたが、近くの草むらや裏山の一部には燃えた跡が。

 

 

 

橋本さんの自宅は先週末まで立ち入り規制が続いていた地域にあり規制が解除されたことを受け11月30日、避難所から戻りました。

 

 

冷蔵庫に残っていた食料品の片付けなどをして、自宅での生活を再開したばかりです。

 

 

しかし、自宅が全焼するなどして依然として避難所での生活を続けている知り合いも多く、複雑な思いを抱えています。

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「家のない人が(避難所に)ずっといて、部落の人がバラバラになってしまう」

 

 

橋本さんが心配しているのが、この地域の「つながり」です。

 

 

佐賀関地区の高齢化率は、大分市内の地区別で最も高く、10月末時点でおよそ58%に上っています。

 

 

今回の火災はそんな高齢者が多い地域で発生しましたが、近所の人同士の声の掛け合いが多くの高齢者の命を救いました。

 

 

火災発生当時、自宅でテレビを見ていたという橋本さん。

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「ここから、早く火事だから逃げてと」

 

 

近所の人が窓から火事を知らせてくれた上で「一緒に逃げよう」と声を掛けてくれたそうです。

 

 

橋本さんは、知らせてくれなかったら気が付かなかったかもしれないと当時を振り返ります。

 

 

そして、強い風が吹く中、着の身、着のままで近所の人と一緒に、近くにある田中公民館まで歩いて避難したと言います。

 

 

こちらは、火災発生当時の映像です。見慣れた景色が炎に包まれ混乱する中、近所の人が声を掛け合い、高齢者を避難させる様子が見られました。

 

 

◆警察官

 

「ここちょっと避難しましょう、みんな。皆さん、避難しましょう」

 

 

当初、橋本さんを含め多くの住民が避難した田中公民館にも火の手が迫り、歩いて10分ほどの場所にある佐賀関市民センターに移動することに。

 

 

しかし、消火活動が続く中杖や車いすを使う高齢者などが移動するのは簡単ではありませんでした。

 

 

 

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「市民センターに行く車がきた。次々来た。1台ではなく次々」

 

 

橋本さんを含む多くの高齢者の移動を助けたのがこちらの車です。

 

 

◆社会福祉法人 大翔会宿利友也施設長

 

「公民館から徒歩で皆さん移動してきて、足の不自由な方から車に乗り込んでもらうように声掛けをしながら移動の支援をした」

 

 

地域にある介護施設が車いすを乗せることができる福祉車両など5台を使って避難所までの移動をサポートしました。

 

 

公民館に近い漁港から避難所まで何度も往復し、およそ30人を運んだということです。

 

 

◆社会福祉法人 大翔会宿利友也施設長

 

「地域ぐるみで関わりがあったのでどこにこの人が住んでいる住んでいないも情報として(住民から)聞きながら迅速に対応ができた」

 

 

 

 

 

地域の助け合いで無事避難ができ自宅に戻ることができた橋本さんですが住宅の再建など街の復興は容易ではないと考えています

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「みんな若ければいいが、仕事をリタイアしている。年齢的に無理」

 

 

それでも、協力し合いながら前を向いていきたいと話しています。

 

 

◆橋本道明さん(77)

 

「無理(と言っていても)いつまでも進まないから努力してどうにかしないと」

 

 

この日、取材を受けてくれたあと自宅に戻っていく橋本さん。近所の人に会うと、話し込む姿も見られました。

 

 

こうした住民同士の日ごろからの付き合いや、いざという時の声の掛け合いが、逃げ遅れを防ぎ、多くの命を救いました。

 

 

生活再建に向けた動きが進む中、地域のつながりが失われないような取り組みも求められています。

 

 

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