時速194キロ死亡事故 懲役8年の実刑判決「危険運転」を適用 2つの要件の成否は?記者が詳しく解説
2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故の裁判員裁判で、大分地裁は「危険運転は認められる」として被告の男に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
この事故は2021年2月、大分市大在の県道交差点で小柳憲さんが車で右折しようとしたところ時速194キロの車と衝突し亡くなったものです。当初、大分地検は当時19歳だった被告の男を過失運転致死罪で起訴しましたが遺族の署名活動のあと、危険運転致死罪に起訴内容を変更し、裁判員裁判が開かれることになりました。
最大の争点は時速194キロの車による事故に「危険運転致死罪」が適用されるかどうかでした。
裁判の中で検察側は「わだちや凹凸のある現場の道路を194キロで走行した場合、ハンドルの操作は困難になる。また、被告の運転は他の車両の安全な通行を妨害するものだった」などと主張。
「制御困難な高速度」で「妨害目的」という要件を満たし、「危険運転致死罪」が成立するとして懲役12年を求刑しました。
これに対し、弁護側は「車は被告の意図した通りに直進できていた。また、他の車の通行を妨害する積極的な意思も無かった」などと反論。
「危険運転致死罪にはあたらず、被告は過失運転致死罪で処罰されるべき」と主張していました。
大分地裁は今日、「制御困難な高速度」での危険運転が認められるとして懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
争点となっていた「制御困難な高速度」と「妨害目的」について大分地裁の判断は以下の通りです。
まず、「制御困難な高速度」について、時速194キロの速度で交差点に侵入した行為はハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって車を進路から逸脱させて事故を発生させる危険性がある速度での走行といえると判断。
一方で、「妨害目的」については被告が被害者に対して、積極的に通行を妨げる動機があったとうかがわせる事情もないことから通行を妨げることを積極的に意図していたとは認められないと判断しています。
懲役8年という量刑については「法定最高速度の3倍以上もの常軌を逸した高速度で車を走行させ、急制動の措置を講じることのないまま交差点に進入したという危険極まりないもの。常習的に高速度走行に及ぶ中、マフラー音やエンジン音、加速の高まりを楽しむために犯行に及んだというもので身勝手・自己中心的な意思決定は厳しい非難に値する。
その上で自己に不利益な事実を率直に認めたり、反省の態度を示している。また、若年であることや保険により損害全額の賠償がなされる見込みがあることなどを考慮した」としています。