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年収に関する「103万円の壁」。政治の場で引き上げようと議論が進められている「年収の壁」について、記者が解説します。
◆TOS・梅田雄一郎記者
この「103万円の壁」ですが、学生時代のアルバイトでこの額を意識していた人も多いのではないかと思います。
アルバイトの学生やパートで働く人にとっては所得税の課税対象になるボーダーラインなんですね。
内訳を見てみますと、基礎控除が48万円、給与所得控除が55万円となっていて、この2つを合わせた金額が103万円なんです。
――つまり103万円までは所得税がかからないということですね。
◆梅田記者
そうです。そのため、年収を103万円に抑えて働く人が多いことから、「103万円の壁」と言われています。今、議論されているのはこの所得税が発生しない「壁」を178万円まで引き上げようということなんです。
――実現すれば手取りが増えるので、働く側にとってはメリットですね。
◆梅田記者
そうですね。また、企業側にとっても年収の上限を気にして働くのを控える人が減ることが考えられ、人材不足の解消につながるというメリットもあります。
こうした「103万円の壁」の引き上げについて、街の人にも考えを聞きました。
◆20代大学生(アルバイト)
「(103万円の壁は)超えないようにしている。両親から言われた。もう少し働きたいなとは思う」
◆20代会社員
「(学生の時は)お金は欲しいけど、なかなか稼げないという、ちょっともどかしいところはあった」
街の人たちも意識していた「103万円の壁」。
しかし、年収についての壁は103万円だけではありません。
専門家は、もっと大事な壁があると言います。
◆ファイナンシャルプランナー阿部しのぶさん
「私は130万円だと思っています。一番(重要)と言われたら。パート・アルバイトで働いている人は先々の年金の受取額が少ないことが問題視されているので、将来の年金が増える期待が持てるということ。そういうところはメリット。ただ、メリットよりも先にどうしても、負担が増えるというデメリットが見えてしまうというところがあるので、皆さんがちょっと喜べないところになるのでは」
◆梅田記者
「103万円の壁」が所得税に関する壁なのに対し、「130万円の壁」というのは、社会保険料に関する壁なんです。
社会保険料に関する壁は勤務先の規模などによって条件が変わりますが、106万円と130万円があって、この金額を超えると厚生年金などの保険料の支払いが発生します。
そのため、仮に所得税の壁が178万円に引き上がっても社会保険料の壁を超えてしまった分は手取りは減ってしまいます。
――デメリットにも思えますが…
◆梅田記者
ただ、将来に受け取る年金の額が多くなる点はメリットといえます。
一方、企業側にとって従業員の給与が社会保険料の壁を超えると、支払いが増えて負担が大きくなるといえます。
ほかにも、考えないといけないのが税収の減少です。政府は年収の壁を103万円から178万円に引き上げた場合、7兆円から8兆円の税収減になると試算しています。
県内の自治体で見てみると別府市では、今年度の税収がおよそ48億円なんですが、17億8000万円の税収減が見込まれるということです。
働く人の手取りを増やす議論は今まさに国会で行われていますが、いくつもの「年収の壁」がある中で、幅広い観点から議論が求められます。