大学生達が旧温泉旅館で共同生活「社会を良くしたい」起業を志す若者達【大分】

2023年04月05日 21:00更新

成功率は1割未満 スタートアップを志す

 

大分県では、この10 年、企業の創業件数が増加傾向にある。2012 年の実績と比べると、ほぼ2倍。4割ほどが、20 代から30 代の若手起業家だという。

 

 

この中には、これまでにない技術やアイデアで急成長を目指す「スタートアップ」も含まれていて、大学生が在学中に起業するケースも増えているそうだ。

 

 

一般的にスタートアップは成功率が1割にも届かないとされる厳しい世界だが若者は今、なぜ、どういった環境でスタートアップという道を選んでいるのだろう。

 

 

 

 

留学生と起業 きっかけは海外旅行

 

立命館アジア太平洋大学に通う現役の大学生(取材当時)田畑春樹さんもスタートアップを立ち上げた1人。バングラデシュからの留学生で友人のファルクさんと、株式会社STEAH(ステア)を創業。

 

 

スタートアップを支援する大分の官民共同プログラムである「ユケムリネクスト」に採択され、補助金や地場経営者のマンツーマンのサポートの元、事業拡大を目指してきた。

 

 

サービスはホームページやアプリの開発。起業にたどり着いた理由についてこう話す。

 

 

――田畑さん

「(大学1年の頃)東南アジアを旅した時に、現地で環境問題だったり川の汚染とかの現場を見たりとか、スラムの貧困の状況とか見たりして、そういうところから社会課題を解決したいと思うようになった。ただ、若い世代が環境とかに関心を持ち始めている中で、実際に行動を起こしている人は少ない。なぜかと考えた時に、社会課題の解決を考えた時に、お金がかかるという声が多かった。お金をかけずに社会貢献ができるシステムなんかを作れないかなと思った」

 

 

貧困や環境破壊を目の当たりにした田畑さんは、誰でも簡単に社会課題の解決に貢献できる環境を実現しようと、「Goodbot(グッドボット)」というウェブシステムの開発に取り組んでいる。

 

 

これは、さまざまな社会課題の解決に取り組むNPO などの団体に対して、ユーザーがお金をかけることなく、募金に参加できるというサービスだ。

 

 

 

 

お金をかけずに社会課題の解決に貢献

 

一体どういう仕組みなのか?まず、各団体がそれぞれのホームページなどにグッドボットを使って「クリック募金」と呼ばれる仕組みを導入する。

 

 

サイトを訪れたユーザーが関心のある社会課題のバナーをクリックすると、団体の活動に賛同しているスポンサー企業がそのクリック数に応じてユーザーの代わりに募金。結果的に団体の活動をサポートできるという仕組みである。

 

 

グッドボットが画期的なのは、「クリック募金」という仕組みを、費用をかけず、簡単に導入できるということ。簡単なプログラムを入力するだけで、既存のウェブサイト上に追加できる。現在は、試作の段階ながら、ビジネスコンテストなどでも評価されている。

 

 

田畑さんは別府市にあるシェアオフィスを拠点に活動を行っていて、バングラデシュのエンジニアたちと共にリモートで開発を進めている。

 

 

――ファルクさん

「一年生の時、寮の台所で料理を作っていた時に田畑と仲良くなった。価値観が合う人だなと思ってました。バングラデシュと日本の発展のために我々ががんばりたい。」

 

 

――田畑さん

「バングラデシュの方々とのつながりがないとここまでできていない。ファルクをはじめ、エンジニアたちにも感謝している。これからもお世話になる。バングラデシュにも日本にもいい組織にしていきたい。」

 

 

 

 

旧温泉旅館で共同生活

 

そんな田畑さんにとって、大切な居場所がもう一つある。別府市にある「Sekiya.so(セキヤソー」。廃業した温泉旅館の一部を利用したシェアハウスで、ここでは起業を志す大学生たちが共に生活している。

 

 

食事をしたり、時には仕事の相談も…、田畑さんにとっては大切な仲間たちだ。

 

 

――後輩は

「自分の第一印象は、ザビジネスマンって感じで、話してみると優しい先輩で、頼りになってる先輩」

 

 

――田畑さん

「慕ってくれる後輩も多くいますけど、自分もまだまだ何かを成し遂げたわけじゃない。これからやらなければいけないことがあるんで。お互いに切磋琢磨したい。早くサービスとかの提供を通して、胸を張って堂々と社会を良くしていますって言える状態になることが目標です」

 

 

そして、今年2月、プログラムの集大成となる「ユケムリスタートアップサミット」というイベントが開かれた。

 

 

県内でスタートアップに関係する団体や起業を志す留学生などが一堂に集まる中、田畑さんも今後のビジョンについて語った。

 

 

――田畑さん

「すべての人が社会課題に関心を持ったその瞬間からアクションを起こせる世界を作っていきたいと思っています」

 

 

東南アジアを旅したことをきっかけに社会課題の解決を目指し、起業という道を選んだ田畑さんは先月、立命館アジア太平洋大学を卒業した。これから本格的な実証を重ねて、今夏頃にグッドボットの正式リリースを目指している。

 

 

 

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