物流が止まる日 燃料代高騰も値上げ交渉は難航…苦境の運送業どう守る

2023年03月21日 07:00更新

原材料費や原油の高騰が様々な方面に影響を与えていますが、大きな打撃を受けている業界の1つが運送業です。

 

 

燃料代が高騰する中、値上げ交渉が難航するケースも多く「物流が止まってしまう」と心配する声もあがっています。

 

 

厳しい状況が続く中、社会全体で改善しようという動きについて取材しました。

 

燃料代高騰…運送業は苦境

 

大分市の運送会社です。

 

こちらでは、およそ50台のトラックを保有し九州内に食料品などを輸送しています。

 

 

しかし…。

 

 

ーーTOS白井信幸記者

 

「こちらの運送会社では自社で給油の設備を設けています。ただ、燃料代高騰の影響を受け、厳しい状況に直面しているということです」

 

 

 

値上げ交渉も…

 

おととし以降、軽油の値上がりが顕著になっていましたが、去年2月のロシアによるウクライナ侵攻後はさらに拍車がかかりました。今年度は、前の年と比べて1か月の軽油代が約3割増加した月もあったということです。

 

 

こうした状況を受けて、会社では取引先に値上げ交渉をしたといいますが…。

 

 

ーー野津運送 薬真寺朗彦代表

 

「なかなか理解されなかったし、客も原油価格の高騰で『我々も色々コストが上がってるんだ』という答えが多かった」

 

 

 

運送業界では「値上げするなら他に頼む」と考える顧客も多く、それぞれの会社は苦しい立場にあるといいます。

 

 

ーー野津運送 薬真寺朗彦代表

 

「我々業界全体が荷主に価格交渉した時に、『その仕事を断られる』、『他社に荷物が取られるのでは』という恐怖心が先走っていて、そこを根本的に解決していかない」

 

「価格転嫁をしたくてもできない」

 

価格転嫁をしたくてもできない…

 

そんな企業の実情は県の調査でも。

 

 

県が去年秋に県内575社に聞き取りを行ったところ、原油・原材料の高騰が経営に影響していると答えた会社はおよそ7割に上りました。

 

 

これに対し、価格の見直しや値上げで対応した企業はおよそ4割に留まっています。

 

 

 

ーー県トラック協会 仲浩会長

 

「これでは今とは言わないが、数年先に物流が止まってしまう。是非理解をお願いしたい」

 

 

こうした状況を改善しようと県や国、経済団体や連合大分など合わせて13の機関や団体が2月、協定を締結。

 

 

下請けと適正な取引を行うよう企業に働きかけることなどが盛り込まれています。

 

 

 

ーー県商工観光労働企画課 宮本賢一さん

 

「確保した収益で賃上げしてもらい、その後は個人消費の活性化に結びつけていく。そういう流れを作り出していくことで、成長と分配の好循環を実現していければ」

 

 

経済の好循環を生むため、価格転嫁に対する社会全体の理解が求められています。

 

 

県では下請けとの適正な取引を行うと宣言した企業に対し、来年度、補助金の優遇措置を行い、後押しする方針だということです。

 

 

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