高まるニーズ 卵子凍結を決めた30代女性の思い「保険ができた、お守りみたいな」広がる将来への選択肢

2025年03月26日 13:30更新

ライフスタイルや仕事などさまざまな理由から将来の妊娠に備えて自分の卵子を凍結する「卵子凍結」。大分県内の医療機関でもこうした治療が行われていて実際にその選択をした女性に話を聞きました。

 

 

 

◆卵子凍結をしたAさん

 

「これからいつどうなるのか分からないので保険として卵子を保存しておきたいというのがあった」

 

 

今回取材に応じてくれた大分市に住む30代の会社員の女性です。

 

 

2025年1月に大分市内の病院で卵子を10個凍結。

 

 

費用はおよそ55万円かかったそうです。経済的にも精神的にも簡単ではないこの決断。背景には女性の多くが持つ悩みがあります。

 

 

 

 

 

日本産科婦人科学会によりますと女性は年齢とともに妊娠しづらくなります。卵子のもととなる細胞は生まれた時から減り続け、思春期などを経て年齢を重ねるたびに妊娠する力が弱くなっていきます。

 

 

そのため少しでも若いうちに卵子を凍結しておこうというわけです。

 

 

具体的には、まず女性の体から卵子を取り出します。必要な処置を施したあとそれを液体窒素のなかで冷凍保存します。

 

 

その後、妊娠を検討する時がきたら取り出して、受精させてから再び女性の子宮に戻します。しかし、これで必ず妊娠するとは限りません。それでも女性が卵子凍結を選択するのには社会的な背景があります。

 

 

女性の社会進出が進みかつてに比べ結婚の時期や仕事でのキャリアなどを考慮する女性が増えています。“社会的適応”と呼ばれるこうした理由から卵子凍結のニーズが高まっているといいます。

 

 

◆セント・ルカ産婦人科 宇津宮隆史院長

 

「すべての生殖医療のなかで卵子の年齢というのは非常に一番重要なファクター(要素)ですね」

 

 

大分市の産婦人科です。

 

 

こちらでも、1年ほど前から社会的適応による卵子凍結の受け付けを始め、これまでに2人が行っています。

 

 

しかし、卵子凍結が進む一方で、気を付けなければならないこともあります。

 

 

◆セント・ルカ産婦人科 宇津宮隆史院長

 

「(採取した)卵は若いんだけど(使用する時に)体が高齢化しているので、高齢出産に伴うリスクが余計に出てくる」

 

 

加えて、保険は適用されず凍結した卵子の保管には1個あたり年間数万円かかる場合があります。

 

 

2025年1月に卵子凍結をした30代の会社員、Aさんです。結婚はしていませんが周囲に不妊治療をしている友人が多く30歳を過ぎてから、卵子凍結を考えるようになりました。

 

 

 

 

 

◆卵子凍結をしたAさん(36)

 

「20代の時は仕事や自分でしたいことがあったので、子どものことまで考えてなくて自分の経験をアップさせていきたいというのがあった。お金もかかるし若いうちからできるかと言われたらできない金額」

 

 

それでも卵子凍結をしてよかったとAさんは話します。

 

 

◆卵子凍結をしたAさん

 

「保険ができた お守りみたいな形でいつか使える時がきたらなという安心感がすごくできた。40歳までには子供が欲しい。それまでに使えたらと思っている」

 

 

県は病気を理由に卵子凍結をする場合は助成を行っています。

 

 

がんなど、妊娠の機能が低下する病気にかかり、その治療前に卵子や精子を凍結する場合です。15歳から39歳までの患者に対して国に先駆ける形で県は2020年から最大で費用のおよそ70%を助成しています。

 

 

◆大分県福祉保健部健康増進室 工藤佳代子さん

 

「いま2人に1人ががんにかかる時代だと言われているので、まさかがいつ起こるかわからない。若い時から多くの方にこういった制度があることを知ってほしい」

 

 

将来、子どもを産むという望みをなくさない。今、卵子凍結は女性の人生設計の中でひとつの選択肢となりつつあります。

 

 

◆取材をした田中愛佳アナウンサー

 

私も働く女性の1人として思うのは仕事を頑張りたいという時期が結婚や出産を考える年齢と同じくらいになることが多いのではないかということです。

 

 

仕事や人生設計などを考えつつ子どもをもつことを諦めない。卵子凍結はそのためのひとつの選択肢になるのかもしれないと取材をして強く感じました。

 

 

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